交流戦で盛り上がるプロ野球界から、信じがたいニュースが飛び込んできた。ジャイアンツのナベツネが球団経営に復帰するという。「球団会長」だとか。あきれかえって開いた口がふさがらない。

明大の一場靖弘投手(現ゴールデンイーグルス)をめぐるスカウト活動の不正で、道義的責任を取り「オーナー」(親会社のサラリーマン社長や会長をオーナーと呼ぶのはどう考えてもおかしいのでカギ括弧つきにします)を辞任してから10ヶ月。復帰の理由は「巨人が歴史的な危機」だから。そして「旧知の球団首脳の方々とも球界改革について話し合いたい」とか。

おかしな点は2つ。

まず第1点は、責任の不明確さである。「道義的責任」とは、対外的に「我が社は悪いことをしました。辞めて責任をとるので許してください」ということだと思う。辞めて責任がとれるかどうかは別問題として、一応辞めることによって責任をとったことになる。

これが復帰できるとはどういう理屈になるのだろう。少なくとも社外(いわゆる「世間」「世論」ということになるか?)が「もう十分責任をとった。過去のことは不問にする」とならなければ復帰などできるわけがない。

ところが復帰の理由が「巨人の危機」。対外的な責任をとって辞めたのに、全く身内の論理で復帰するというのだ。こんな筋の通らない話はない。

第2点は、球界改革について。交流戦は始まったものの、ドラフトの完全ウェーバ制、FA資格の短縮、サラリーキャップ、テレビ放映権等々確かに球界改革は遅々として進まない。 満を持したナベツネ登場で、昨年からの流れに再び勢いがつき、改革が一気に進むのか?残念ながらそんな可能性は低い。ナベツネがこれらの改革に、他球団への脅しを使って抵抗してきたのは旧知の事実。「現在ドラフト改革に抵抗しているのはソフトバンクで、読売は選手会寄り」といった話も聞くが、ナベツネ復帰でどうなることやら。

彼は「球界改革が悪い方に進んでいるのでセ各球団やソフトバンクと話し合ってストップをかける」。「球界改革について話し合いたい」とは、翻訳すればこういうことになるではないか。

 この心配が杞憂に終わることを願っている。